
上記画像は以前撮影した多段露光ライブスタッキングを画像処理したものです。
この時使用したカメラはASI224ですが、飽和電荷量が低いため、非常にピーキーなカメラです。(スイートスポットが狭い)
このようなカメラには特に多段露光が有効になります。(画素数が少ないのでどうしても輝星は太りますが。。。)
以前ライブスタッキング時に多重露光を行うと手軽にシグナル量を増やすことが出来るため効果的と記載しましたが、どのように画像処理していくのかを記載していませんでしたので覚書として記します。
大原則となる事項がいくつかありますのでその部分をまず最初に記載します。
・メインとなる適正露出画像をベースにして、アンダー(半分の露出時間)とオーバー(倍の露出時間)に変更しスタッキングする。(スタッキング枚数は適正露出、アンダー、オーバー全て同じが楽)
・ダークを取得する場合は最低オーバー画像を一枚(理想は露出秒毎)
・スタッキングは16ビット空間以上で行い、16ビットファイルで書き出す。
まず最も大切なことは撮影する対象が適正露出となる露出量を見つけ出す事になります。
撮影の場合はゲイン0でチェックしますが、経緯台を使用したライブスタックの場合ゲイン0では露出時間が長くなりすぎると思いますので、ゲインを上げます。(なので経緯台のライブスタッキングの場合はゲイン0で換算した場合には全てアンダーです。)
ゲインを上げた状態でヒストグラムの偏りが無くバランスが取れた画像(ゲインを上げているのでノイズは多い)をベースとして、倍の露出量(オーバー)、半分の露出量(アンダー)の画像もスタッキングしていきます。
適正露出、アンダー、オーバーのスタッキング枚数が同じ場合は画面上では適正露出の画像に近い状態で見えます。(モニター上では平均化されているため変化があまり見えませんが、見えないだけでシグナル量は確実に増えています)
この際、スタッキング枚数を増やせば暗電流ノイズとリードノイズを平均化出来ますので後ほどの画像処理でシグナルを取得しやすくなります。
スタッキング後は16ビットファイル(FITSやTIFF)として書き出します。
私の場合はこのファイルをKStarsのFITSビューアで開きます。

このビューアはSEPを用いてFITS画像の星の識別が行いやすいように自動で画像処理(オートストレッチ+α)がされて表示されますので見ながら調節しやすいです。(ライブスタッキングの場合は特に、先程述べたようにゲインを上げてオートストレッチなどを行い、モニタ上では適切に見えていても実際のデータはライブスタッキングではアンダー傾向になりますので通常は暗めになります。)
この状態で赤枠部分のスライダーを動かしてアンダー、適正露出、オーバーの画像をPNGに書き出します。


今回は4つ星部分がありましたので、ドアンダー画像、アンダー画像を2枚書き出しました。
この二枚の画像は4つ星部分と輝星の中心部分の情報になります。

次は適正露出として見える画像を書き出します。
中心部分や輝星は飽和していますが、全体的なバランスはこの画像に近くなるように後ほど調整します。

最後にオーバー画像を書き出します。
この画像はガス雲の細部情報の情報として利用します。
今回は4枚でしたが、欲しい情報に合わせてスライダーを調整して書き出します。
書き出しが終わったらフォトショップなどレイヤーが使用できる画像処理ソフトで開き、今書きだした4枚の画像をレイヤーとして重ねます。

今回は4枚なので、それぞれの透明度を25%にします。
これで4枚の画像の情報が均等に含まれた画像が出来ましたので、この段階でTIFFかビットマップに書き出します。
書き出した画像を開き、色調整、レベル調整、場合によってはレイヤーとして複製してレイヤー合成などを行って仕上げます。
仕上げは最終出力に合わせて調整します。(モニター、インクジェット、商業印刷、印画紙など)
最終出力の中で最も情報が広く見えるのはモニターですが、モニター含め最終出力は全て8ビットカラーなので、フォトショップでの作業は8ビットで構いません。
画像処理が困難になる原因の一つは最も情報が多く見えるモニターでも16ビットファイルの場合1/256(それ以下)の情報量しか確認できないため、見えない状態で作業を行うことが多くなることです。
常にモニターでシグナルが見える状態で作業を行うワークフローにすれば失敗することが少なくなります。
今回ご説明した方法はライブスタッキングで16ビットという広い空間に露出時間を変えながらシグナル情報の多い16ビット画像(シグナルデータバンク)を作り、その画像から8ビットの狭い色空間に効果的にまとめるために欲しい情報を分割して取り出して、合成でまとめるというものになります。
ライブスタッキングだけでは無く、天体撮影にも使える方法(撮影の場合は露出時間毎に加算平均でスタッキングして、BMPなどにそれぞれ書き出します。(加算ではありません))です。画像処理が苦手な方でもモニタを見ながら処理出来ますので簡単ですよ。
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