天体カメラで撮影やEAAを行う場合、ほとんどの方がFitsファイル(ヘッダに天体情報を付随したRaw画像)形式で保存して画像処理をされているかと思います。
実はFitsファイル自体は画像としてJpegなども格納出来るのですが、撮影を行うアプリが対応しておらずカメラのRaw画像とヘッダに天体情報を付随してFitsファイルとして取り扱うような設計になっています。
天体撮影においては雑誌・マニアの情報からデジカメでもRawファイルをする方が多いと思いますが、いずれにしてもRaw画像部分に関しては注意が必要になる部分がありますので覚書として記載しておきます。
1.そもそも天体カメラのRaw画像もデジカメのRaw画像も真のRaw画像ではない。(何らかの画像処理がなされている)
2.天体カメラのFitsファイルに関してはカメラの特性に合わせた校正情報(デジカメで言うところのプロファイル)がない。
3.Fitsファイルを開くアプリにおいても天体カメラの場合は校正情報、デジカメの場合はプロファイルに対応した機能がない(デジカメに関してはプロファイル対応したものもある)
4.Fitsファイルを開くアプリによってFitsヘッダの反映が異なる
5.Fitsファイルを開くアプリによってデータ値のモニタ表示が異なる
てんこ盛りですね。。。
1に関しては私が所有するASI224のメーカー公表グラフをご確認いただけるとわかるのですが、ゲイン60でSNが向上するポイントがあります。
本来このカメラの撮像素子は防犯カメラやドライブレコーダーでの利用を意識して撮像素子に対応したDSPチップで様々な画像処理が行えるようになっています。(3Dノイズリダクションや、暗所でのノイズ軽減処理など多数の機能を持っています。)
ZWOのカメラは撮影時にカメラのDSPを利用した場合、8ビットカラーのソフトウェアビニングとゲインアップ時のノイズリダクションが利用できるようになっています。(どうせなら防犯カメラで使われているような画像処理機能も内蔵してほしかったですが。。。)
このことからPCに転送される際にDSP処理後の画像が送信されていると考えて間違いないでしょう。
デジカメに関しては画像処理エンジン自体がブラックボックスになっていますが、同様にDSP処理後のデータが送信されていると思います。
2~5に関しては実際に画像を見ながら確認したほうが早いでしょう。

上の画像は以前多段スタッキングの記事で撮影したものです。
カメラはASI224、撮像アプリはASILive、ゲインはHigh(300)で、5秒(適正露出)20枚、10秒(オーバー)20枚、2秒(アンダー)80枚をスタッキングしています。
経緯台のため、あまり長時間スタッキングすると視野回転が大きくなりすぎますので、暗電流ノイズ除去のためアンダー画像を増やしましたので、スタッキング時の画像はアンダーに見えます。
ではこのFits画像をそれぞれのFitsビューアで開いてみましょう。

まずはZWO純正のASIFitsビューアーです。
アンダーで撮影したのに明るくなっています。
おそらく自動でASILiveの設定値やヒストグラム調整をして表示しているようです。
撮影時の明るさとは異なりますが、画像処理はこの方がしやすいですね。(色もそんなにズレてませんし)

次はスタッキング+画像処理アプリのSiliLです。
何故か上下反転していますね。
ASILive撮影時同様アンダー画像ですが、色が大分異なります。

同じくスタッキング+画像処理アプリのASTAP(PlateSolvingも優秀です。)
これまた上下反転。。。
色や明るさもSiriLと異なりますね。

お次はGIMPです。
あまり知られていませんが、GIMPはFits画像を開くことができます。
これまた上下反転しています。
色や明るさはSiliLと似ていますね。(同じエンジンかも)

最後はわたしがよく使用しているKStarsのFitsビューアです。
こちらは上下反転していませんね。
以前からですが、KStarsはPlateSolvingやガイド機能で星の識別を良くするために自動的に画像調整(星の輝度とバックグラウンドの分離)が行われていました。そのためPlateSolvingの成功率が非常に高かったのですが、最近更にPlateSolvingにStelarSolverが搭載され、SEP (SExtractor)機能も内蔵されましたので、画像調整機能が向上しています。
実際の画像よりかなり明るく鮮明に見えています。(ノイズも見えますが)
私が以前記載した記事はKStarsのFitsビューアのSEP (SExtractor)自動処理機能を画像処理として利用して処理の手間を省くものでした。
デジカメのようにプロファイルがあればアプリ間の色や明るさを統一出来ますが、デジカメもRawで撮影した場合はアプリ側がデジカメのプロファイルに対応していないと同様のことが起こります。
Fitsファイルの場合は更にFitsヘッダの反映もアプリにより異なりますのでこのようにバラバラな状態になってしまいます。
撮影時のモニタ表示とFitsビューアで色や明るさが異なるのは困りますね。。。(画像処理が一手間増えます。)
校正情報が無いので完全な対処法はありませんが、撮影用ソフトでホワイトバランス(昼の曇りの日に白い紙を写し、白くなるようにカラーバランスを調整)を取っておけば後の調整が若干楽になります。
画像処理アプリに関しては撮影時の色や明るさに合わせるパラメーター設定を行う方法もありますが、設定によっては天体のシグナル情報が減ることになるので、私が行っているようにビューアの自動処理を利用して見やすい状態で処理しても良いかと思います。(そもそも天体の色や明るさなどは正解がありませんので。。。)
PS
とはいっても、正直カメラ、ビューアーともプロファイル機能はほしいですね。
天体カメラの撮像素子は高性能なので、校正用のプロファイルがあれば測光や等級識別など観測用途にも利用できるのに。。。ちょっともったいない気がします。
個人的には撮影に慣れるまではデジカメのJpeg撮影(プロファイル、ホワイトバランス、ISO、カメラの画像処理エンジンなどを利用できます)で天体の適正な露出値の把握や、見やすい画像(適正露出ならモニターで見やすいですね)で画像処理のイロハを習得したほうが近道のように感じます。(スタッキングすれば処理に適した16ビット画像にもできますし)
実はFitsファイル自体は画像としてJpegなども格納出来るのですが、撮影を行うアプリが対応しておらずカメラのRaw画像とヘッダに天体情報を付随してFitsファイルとして取り扱うような設計になっています。
天体撮影においては雑誌・マニアの情報からデジカメでもRawファイルをする方が多いと思いますが、いずれにしてもRaw画像部分に関しては注意が必要になる部分がありますので覚書として記載しておきます。
1.そもそも天体カメラのRaw画像もデジカメのRaw画像も真のRaw画像ではない。(何らかの画像処理がなされている)
2.天体カメラのFitsファイルに関してはカメラの特性に合わせた校正情報(デジカメで言うところのプロファイル)がない。
3.Fitsファイルを開くアプリにおいても天体カメラの場合は校正情報、デジカメの場合はプロファイルに対応した機能がない(デジカメに関してはプロファイル対応したものもある)
4.Fitsファイルを開くアプリによってFitsヘッダの反映が異なる
5.Fitsファイルを開くアプリによってデータ値のモニタ表示が異なる
てんこ盛りですね。。。
1に関しては私が所有するASI224のメーカー公表グラフをご確認いただけるとわかるのですが、ゲイン60でSNが向上するポイントがあります。
本来このカメラの撮像素子は防犯カメラやドライブレコーダーでの利用を意識して撮像素子に対応したDSPチップで様々な画像処理が行えるようになっています。(3Dノイズリダクションや、暗所でのノイズ軽減処理など多数の機能を持っています。)
ZWOのカメラは撮影時にカメラのDSPを利用した場合、8ビットカラーのソフトウェアビニングとゲインアップ時のノイズリダクションが利用できるようになっています。(どうせなら防犯カメラで使われているような画像処理機能も内蔵してほしかったですが。。。)
このことからPCに転送される際にDSP処理後の画像が送信されていると考えて間違いないでしょう。
デジカメに関しては画像処理エンジン自体がブラックボックスになっていますが、同様にDSP処理後のデータが送信されていると思います。
2~5に関しては実際に画像を見ながら確認したほうが早いでしょう。

上の画像は以前多段スタッキングの記事で撮影したものです。
カメラはASI224、撮像アプリはASILive、ゲインはHigh(300)で、5秒(適正露出)20枚、10秒(オーバー)20枚、2秒(アンダー)80枚をスタッキングしています。
経緯台のため、あまり長時間スタッキングすると視野回転が大きくなりすぎますので、暗電流ノイズ除去のためアンダー画像を増やしましたので、スタッキング時の画像はアンダーに見えます。
ではこのFits画像をそれぞれのFitsビューアで開いてみましょう。

まずはZWO純正のASIFitsビューアーです。
アンダーで撮影したのに明るくなっています。
おそらく自動でASILiveの設定値やヒストグラム調整をして表示しているようです。
撮影時の明るさとは異なりますが、画像処理はこの方がしやすいですね。(色もそんなにズレてませんし)

次はスタッキング+画像処理アプリのSiliLです。
何故か上下反転していますね。
ASILive撮影時同様アンダー画像ですが、色が大分異なります。

同じくスタッキング+画像処理アプリのASTAP(PlateSolvingも優秀です。)
これまた上下反転。。。
色や明るさもSiriLと異なりますね。

お次はGIMPです。
あまり知られていませんが、GIMPはFits画像を開くことができます。
これまた上下反転しています。
色や明るさはSiliLと似ていますね。(同じエンジンかも)

最後はわたしがよく使用しているKStarsのFitsビューアです。
こちらは上下反転していませんね。
以前からですが、KStarsはPlateSolvingやガイド機能で星の識別を良くするために自動的に画像調整(星の輝度とバックグラウンドの分離)が行われていました。そのためPlateSolvingの成功率が非常に高かったのですが、最近更にPlateSolvingにStelarSolverが搭載され、SEP (SExtractor)機能も内蔵されましたので、画像調整機能が向上しています。
実際の画像よりかなり明るく鮮明に見えています。(ノイズも見えますが)
私が以前記載した記事はKStarsのFitsビューアのSEP (SExtractor)自動処理機能を画像処理として利用して処理の手間を省くものでした。
デジカメのようにプロファイルがあればアプリ間の色や明るさを統一出来ますが、デジカメもRawで撮影した場合はアプリ側がデジカメのプロファイルに対応していないと同様のことが起こります。
Fitsファイルの場合は更にFitsヘッダの反映もアプリにより異なりますのでこのようにバラバラな状態になってしまいます。
撮影時のモニタ表示とFitsビューアで色や明るさが異なるのは困りますね。。。(画像処理が一手間増えます。)
校正情報が無いので完全な対処法はありませんが、撮影用ソフトでホワイトバランス(昼の曇りの日に白い紙を写し、白くなるようにカラーバランスを調整)を取っておけば後の調整が若干楽になります。
画像処理アプリに関しては撮影時の色や明るさに合わせるパラメーター設定を行う方法もありますが、設定によっては天体のシグナル情報が減ることになるので、私が行っているようにビューアの自動処理を利用して見やすい状態で処理しても良いかと思います。(そもそも天体の色や明るさなどは正解がありませんので。。。)
PS
とはいっても、正直カメラ、ビューアーともプロファイル機能はほしいですね。
天体カメラの撮像素子は高性能なので、校正用のプロファイルがあれば測光や等級識別など観測用途にも利用できるのに。。。ちょっともったいない気がします。
個人的には撮影に慣れるまではデジカメのJpeg撮影(プロファイル、ホワイトバランス、ISO、カメラの画像処理エンジンなどを利用できます)で天体の適正な露出値の把握や、見やすい画像(適正露出ならモニターで見やすいですね)で画像処理のイロハを習得したほうが近道のように感じます。(スタッキングすれば処理に適した16ビット画像にもできますし)
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