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特集:天体機器のメンテナンスについてのカテゴリー記事一覧


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これまでこのブログではさまざまな角度から星空の楽しみ方について触れてきました。

肉眼のみで星空を見る方には必要ない情報ですが、天体機器やPC、スマホなどを利用して楽しむ場合はそれらの機器のメンテナンスが必要になります。

ざっと挙げるだけでも以下の通り

・機器が機械として正常に動くように維持する。

・PCやスマホなどから複数の機器を制御する場合、正常に制御出来るように準備する。

・光学面(レンズ、CCDなど)の清掃

・光軸の調整

・機器の清掃


天体機器は可動部品の塊です。
正常に動かない機器を制御、制御が正常に行われない場合いずれも機器の破損に繋がる恐れがあります。

光学面に汚れがある場合は、光学性能が低下し、特に長時間露光の撮影などで顕著に影響が出ます。(フレア、ゴーストなど)

撮影に関しては複数機器を接続して制御を行いますので、メンテナンスをしっかり行わないと上記以外にも取り付けた際の精度、端子の接触不良などさまざまな不具合要因が出てきます。

これらについてまとまった情報として取り上げているサイトが少なかったので、自身の覚書としても利用出来るよう複数回に分けて記載しておこうと思います。

天体機器のメンテナンスに関しては人それぞれですので、こだわる場所が異なりそうですが、記事においては私個人が普段行っているメンテナンスを列記します。
今後上記項目ごとに記事を記載していきますので良い情報がありましたらコメントいただけると幸いです。(みなさんの参考になると思いますので)




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メンテナンスシリーズの初回はレンズの清掃についてです。

望遠鏡や双眼鏡、カメラなど光学機器を購入した方がメンテナンスとして最初に気にする部分かと思います。

二歳の頃に親からカメラを渡され遊んでから早50数年(涙)、情報を集めながら自己流で行っている方法になります。
そのため、経験則的な内容になりますがこの方法で今まで光学面にカビが生えたこともありませんし、レンズや鏡面に傷をつけたこともありませんので、そこそこ安全な方法かと思います。
専門知識をお持ちの方はコメントいただけると幸いです。

清掃を行うにあたっていくつかマイルールとして原則的に守っていることがあります。

1.清掃の優先順位・重要度は焦点面に近いところから
眼視であれば 接眼レンズ→フィルター(使用する場合)→レデューサーorバロー(使用する場合)→対物レンズ(または主鏡)
撮影であれば 撮像素子→フィルター(使用する場合)→レデューサーorバロー(使用する場合)→対物レンズ(または主鏡)

光軸調整においても同様ですが、焦点面に近いレンズほど結像に顕著に影響を与えます。
そのため、観望や撮影後には必ず焦点面に近いところからチェックして目に見えるホコリやチリなどがあった場合はエアーダスターで吹き飛ばします。

2.目視でレンズ面・撮像素子などにチリ・ホコリが見えない状態にしてから保管する。
観望、撮影が終わったあと、片付けて室内に入ってからすぐに上記優先順位順に撮像素子やレンズを目視チェックします。
チリ・ホコリのような付着物が見えた場合はエアーダスターでレンズ周辺部から中心に向けて吹き付けて飛ばします。

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逆さにしてもガスが出ない商品を使いましょう。(初回は念のため逆さにして吹いて確かめます)
私はこれを頻繁に使用するため常時備蓄しています。

これでほとんどの場合は大丈夫ですが、稀に付着物が取れない場合があります。その場合は付着物のある部分のみ湿式清掃に切り替えます。

湿式清掃はケミカルを使用するため、付着物の成分に対する知識が必要です。
付着物となるものは大別して3種類あります。

有機物
・オイルミスト
・花粉(無機物も若干含む)
・細菌、微生物(バクテリア、カビ、ウィルス、ダニなど)

成分は油、タンパク質、炭水化物など。

無機物
・黄砂、粉塵、火山灰

成分は炭酸カルシウム、マグネシウム、シリカ、カーボン、金属化合物など

有機・無機混合物
・化粧(マスカラ、パウダー、ファンデーションなど、油と顔料(無機物)の集合体)
・指紋(皮脂、タンパク質、炭水化物、ナトリウムなど)
・煤煙(カーボン、鉱物油を中心にありとあらゆる汚れが付着しています。。)

エアダスターで取れない汚れは残念ながら有機・無機混合物のしつこい汚れである場合が多いです。
有機物(特に油)が吸着源になることが非常に多いのですが、無機物であっても炭酸カルシウムなどはガラス成分のシリカと結合しやすく、堆積した場合非常に厄介なことになります。(俗に呼ばれる水アカです。炭酸カルシウム+シリカ+マグネシウムなどの複合体に成長します。)

私は以下のケミカルを使用しています。

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原則として湿式清掃は
精製水で始まり、精製水で終わる
を厳守しています。(IPAは主に精製水に混ぜて乾燥時間をコントロールするのに使用)
これらのケミカルを綿棒やトレシー、レーヨンで出来たクリーニングペーパー、脱脂綿に少量付けて汚れ部分のみポイントで撫でるように拭きます。(こするのは厳禁ですよ)

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綿棒、クリーニングペーパー、トレシーなどは使い捨てにします。(トレシーは使いやすいサイズに切って使います。)
精製水、中性洗剤はかなり万能に使用できますが、必ず洗浄成分を精製水できれいに拭き取りすることが重要になります。そうしないと、余剰成分がホコリなどの吸着源になります。

ペーパーを購入する場合は原料に注意してください。パルプは繊維が硬いのでレーヨンやポリエステルの方が安全です。

油性や混合の汚れであっても初期段階であれば精製水で落ちます。(水は万能溶剤です)

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湿式の場合は手袋もお忘れなく

注意が必要なのは細菌類(特にカビ)です。

私は一度だけカビが生えた鏡筒をヤフオクで購入したことがありますが、カビなどの細菌は有機溶剤で処理しようとすると、脱脂されて固着します。(タンパク質、炭水化物、各種ミネラルを含んだ固着酸化物になります。。。)

カビなどの細菌類の汚れの場合のみ
中性の界面活性剤→精製水の順で部分洗いをします。(精製水から始めると菌糸を広げてしまいます。)
部分洗いが終わったあと、乾燥させてから全体に界面活性剤を馴染ませ、精製水で洗浄します。


私がレンズ全面を洗浄する必要があると考える状態は以下になります。(数年に一度)
・夜露や霜でレンズ全体が湿ってしまったとき(水分でありとあらゆるゴミが付着します。)
・カビを発見した時
(体験したのはヤフオク購入の一台のみです。。ショックでした)

夜露や霜の場合は乾燥後
エアーダスター→精製水→中性洗剤、もしくは溶剤→精製水でなで拭きします。
広い面積を施工する場合はトレシーなどのマイクロファイバー繊維が使いやすいです。

レンズ全面を洗浄する場合は必ずレンズ外面から中心に向けて円を描くように行っています。(特に外周部を念入りに、巷にあふれる情報と逆ですね)

追記
カビは界面活性剤で死滅させることができます。界面活性剤で部分洗浄したあと全体も界面活性剤をかけて菌糸を撲滅してから精製水で流しましょう。

レンズの清拭で中心から外に円を描くようにという記述を見かけますが、この施工法はレンズセルからレンズを取り出し、レンズ単体をろくろのような機械でを回転させながら施工する方法になるのかなと感じています。(その機械を使用すると効率的に付着物をレンズ外に追い出せますので)

分解しないでこの方法で清拭するとレンズセル周辺部に付着物が堆積し、カビの原因になります。(レンズカビの写真で外側からカビが生えているのはこれが原因ですね)

分解しない清拭の場合はエアーダスターにしろ、湿式にしろ常に外周部からスタートして中心部にゴミを集めてから取り除くほうが付着物を減らすことができるように思います。

湿式で精製水、界面活性剤、溶剤の量に関しては若干湿る程度(すぐに乾く)が適量です。

唯一の例外がカビです。
界面活性剤をたっぷりつけ、カビを取り除いてから、精製水で徹底的にすすぎ、脱脂綿などで水滴を丁寧に吸い取り乾燥させてください。

その際、くれぐれも水道水を使わないようにしてください。(落とすことが困難な水垢の原因になります。)

さらに追記
私は所有する機器全てにお守りのように富士のカビ防止剤を対物レンズカバーの裏に貼っています。

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いい加減な施工でも無事だったのは案外これのおかげかもしれませんね。

対物レンズに傷が入る原因は無機物が堆積した状態でこすることが原因と考えます。
無機物はエアーダスターで簡単に飛んでくれますので(と、いうかほとんどの汚れが早期であればエアーダスターで飛びます)、日頃のメンテナンスはエアーダスター中心で終わらせています。

溶剤や界面活性剤でムラになるという方は表面上に有機物が残留しています。
再度溶剤で軽く拭き精製水で仕上げればムラが消えますよ。



前回の記事が長くなってしまい、レンズや反射鏡の清拭のディテールが記載できませんでしたので補足します。

エアーダスターで見えるホコリなどを全て吹き飛ばしたあとに行うことです。

見える固着物がある場合
1.綿棒に精製水をたっぷりと含ませ、固着物をなでる。(カビの場合は界面活性剤)
2.綿棒の接触面を変えながらなでるように拭くを数回繰り返す。(取れなければIPAやEEクリーナーなど溶剤を変える、カビの場合のみ界面活性剤)
3.固着物が取れたら、以下に記載する全面清拭と同様の方法で周囲をならすように拭く。


レンズで湿式清拭を行う場合は、見える固着物がある場合のみ多めの溶剤(精製水orIPAorEEクリーナーor界面活性剤)を使います。

この場合周囲がムラになりますので、取り除いた固着物周囲をならし拭きします。

レンズ全面清拭を行う場合
1.割り箸やナイロン毛の平筆を軸にして折りたたんだクリーニングペーパーで挟んで持つ。
2.拭く面のクリーニングペーパー部分にごくわずかな量の溶剤(精製水orIPAorEEクリーナーor界面活性剤)をつけます。※
※溶剤量の目安やゆっくり動かした際、2~3cmで拭きスジが乾燥する程度(どの溶剤でも同じ状態、揮発が速い溶剤ほど量が多くなります)
3.最初は精製水で拭いてみて、拭きスジにムラが見えた場合は溶剤を変更します。(IPAorEEクリーナー)
4.クリーニングペーパーの接触面の位置をずらしながら拭きスジが均等に見えるまで同じ場所を拭きます。(一回拭くごとに挟む位置をずらし、レンズに傷をつけないように同じ面で拭かないようにします。)
5.場所を移動しながら拭き、外周半周くらい拭いたら一気に半周くらい拭き、拭きスジの消え方を見て問題なければ次の場所に移動します。
6.4~5を繰り返し、レンズ中心にきたら中心部分をかるくならし拭きします。
7.エアーダスターを全体に拭きかけ、レンズ面になにも付着物が見えなければ完成です。


ここで、ポイントになるのは溶剤量です。2~3cmで拭きスジが乾燥する程度の溶剤量で作業するときれいに仕上がります。
拭きスジを観察すると、目視では確認できなかった汚れをムラとして発見出来ます。

上記手順でうまく清拭出来ると、軽く息を吹きかけると均等に曇り、すぐに曇りが消えます。(レンズ面になにも付着していない場合はこのようになります。)

反射鏡の場合はレンズと清拭方法が異なります。
基本的に鏡筒から反射鏡を取り外して清拭します。
この際、取付時に同じ位置に配置出来るよう、マジックなどでマーキングしておいてください。望遠鏡はどうやら現物合わせで調整されているようなので、部品配置や、反射鏡位置がずれると光学性能が出なくなります)

ブロアーで見えるゴミを全て吹き飛ばしすこと、見える付着物がある場合は綿棒でアプローチするのはレンズと同様です。

清拭は反射鏡面に目視で確認できる付着物が全て無くなった状態で始めます。

反射鏡の清拭手順
1.風呂場などにマットを置き、マットの上に反射面を上にして反射鏡を置く
2.中性洗剤1に対し、精製水10程度鏡面に注ぐ
3.脱脂綿をゴルフボール大にちぎり、脱脂綿の面を変えながらをゆすぐように鏡面全体を拭く
4.反射鏡を傾けて、洗浄水を可能な限り鏡面から流す
5.精製水を注ぎ、再度脱脂綿を先程同様ゴルフボール大にちぎり、脱脂綿の面を変えながらをゆすぐように鏡面全体を拭く
6.反射鏡を傾けて可能な限り精製水を鏡面から流す
7.泡が出なくなるまで5~6を繰り返す。


うまく清拭できれば鏡面が疎水状態になり反射鏡を傾けると鏡面に水滴が残りません。

反射鏡を傾けて、精製水を流す時、精製水が弾かれるような場所や、同じ場所で水滴が残るような部分がある場合は鏡面に目に見えない付着物があります。

そのような場所があった場合は上記同様綿棒でその部分にのみ溶剤でアプローチ→クリーニングペーパーでならし拭きします。

油性、タンパク質、炭水化物などの汚れであれば、これで消えますが、精製水でならし拭きをしてもムラが消えない場合は水垢の可能性が高いです。

水垢は清拭ではまず取り除けませんので、乾燥させて終了します。※
※水垢の最大の原因は水道水です。反射鏡は大きい場合が多いので水道水を使いたくなりますが、かなり多くのミネラル(特に炭酸カルシウムとシリカが厄介です。。。)を含んでいるので水道水は利用しないようにしましょう。
目視できない程度の水垢であれば光学性能にさほど影響がありません。
目に見えるほど白くなってしまった場合は。。。我慢して使うor再研磨+再メッキのいずれかになってしまいます。。。

以上です。
前回伝え切れなかった手順や清拭する際の溶剤の量の目安(自己流ですが)を記載しました。

溶剤で注意が必要なのは界面活性剤です。
必ず精製水で拭き取り、洗剤成分を残さないようにしてください。(洗剤が残っているとシミの原因になりますし、汚れを固着させる原因にもなります)

クリーニング液を利用してムラに苦しんでいる方は、液のつけすぎ(溶けた汚れの再固着)か、ご使用になっているクリーニング液が界面活性剤のいずれかになります。

つけすぎの方は上記の通り拭きスジが2~3cmで消えるくらいの量に調整してみてください。
クリーニング液が界面活性剤の方は精製水で仕上げればムラが消えます。

あと一つ注意点があるとすれば、
乾拭きをしないことです。(コーティング部分への攻撃性が高くなり傷を作る原因になります。)

前回の記事でも記載しましたが、対物レンズや反射鏡の傷などは少しであれば全くと言っていいほど結像する像質に影響しません。
しかし、所有者にとっては非常に気になる部分になるかと思います。
日常的にメンテナンスしていればきれいに保つことが出来ますので参考になるところがあればお試しください。

初回の光学面のクリーニングが大分長くなってしまいました。。。(先が思いやられます。)

今回は光軸調整に関して記載します。
クリーニングの記事でも触れましたが、光学機器の場合は焦点面に近いところほど焦点像に影響を与えるため、焦点面に近い光学系からメンテナンスを開始します。

そして、最初にお断りしておきますが、完全に光軸を調整するのは事実上困難であるということを念頭において調整してください。(理由は記事をお読みください)

光軸の定義
対物レンズ(もしくは主鏡)から焦点面(もしくは焦点面に最も近いレンズ)の全てのレンズが完全に並行に配置されていて、中心点が全て揃っている状態。

上記が光軸が完全に合っている状態になります。

光軸が完全に合っていれば、中心像が最も結像状態が良くなり、上下左右の視野周辺が中心点から均等に収差が現れる状態になります。(収差補正レンズがある場合は目視で周辺像の劣化が低くなります。)

要は構成される光学系(レンズや鏡)から焦点面までが全て中心が揃った状態で一つも傾きなどが無く360度並行状態を保った状態で配置されている必要があるということです。。。

焦点像を作るための起点となる対物レンズや反射鏡など重いものがが最も端にあり、撮影ともなると更にカメラまで取り付けることになりますのでたわみます。。

可動部はクリアランスを取らないと動きませんので多少なりともガタが出ます

これらをキチンと調整しておかないと、撮影対象が変わる度にひんぱんに光軸が狂うことになります。(調整してもたわみや若干のガタなどで完全な状態にすることは困難です。。。が、目で見て気にならない所までは追い込めます。)
調整の順番を間違えると、いつまでたっても調整が出来ない調整沼にハマります。。。


実際の調整方法(私の場合)

撮影の場合
上記記載の通り、焦点面に近い部分の可動部、取付部から順にチェックする。

1.視野全面に星が多い空域を導入して追尾状態にする。

2.フォーカスを少しだけずらす(若干ピンボケにする)→この状態で片ボケが無いか確認する。

3.カメラを回転させて撮影→片ボケ位置が回転する場合はカメラ回転機構、カメラアダプタのガタを調整する。

4.3の調整でも周囲のボケが対象でない場合(カメラを回転させても同じ場所がボケる)→鏡筒バンドで鏡筒を取り付けている場合は鏡筒を回転させる、鏡筒が回転出来ない場合は別の空域に移動する→その後撮影して変化を見る

5.4で片ボケに法則性がある場合はフォーカサーがドローチューブの場合はドローチューブのガタを調整する。(固定方向に)

6.それでも周辺のボケが対象にならない場合は、対物レンズ(主鏡)の光軸調整機構を使い、中心部のボケが同心円状態になるように調整する。



眼視の場合はカメラではなく、アイピースを回転させて片ボケが回転するか確認します。(ちゃんと取り付けても改善されない場外はアイピースを交換して確認します、その後は撮影同様の手順です)

要は焦点像に影響が大きい焦点面に近いところにある取付部、可動部を全てチェックして最善の状態にしてから(行う必要があれば)対物レンズや主鏡の調整を行います。

そして、焦点面に近いところにある取付部、可動部のチェックは毎回行います。(気温などでもガタが変化します)


唯一の例外機材はシュミットカセグレンやマクストフカセグレンなどの主鏡移動タイプです。
この場合はカメラ取り付け部のガタを確認→追尾状態で暗い星を導入後、若干フォーカスをずらして中心部のボケが同心円状でない場合に限り副鏡の調整を行います。

実はシュミットカセグレンやマクストフカセグレンなどの主鏡移動タイプでない限り、対物レンズ(または主鏡)は固定されているのでめったには光軸が狂わない(反射タイプの方が若干狂いやすい)ように感じています。

上記のように焦点面に近い取付部、可動部からチェックする癖をつければ、調整時間も短縮されますしどこにトラブルがあるのかも把握しやすくなります。

私は褒められたことではありませんが、ドローチューブの鏡筒で撮影に利用するものはカメラを取り付けた際、フォーカスが合う位置まで伸ばした状態でガタ調整をしてそのまま収納しています。(クッションウレタンなどを加工して)

機材にとっては良くないかもしれませんが、撮影前の調整が少なくて済みますので。。。(手抜きです)

特集しているメンテナンスシリーズですが、今回は観望、もしくは撮影時に天体機器を組立てる際や、日常的な取り扱い時の注意事項やメンテナンスを記載します。

昨今の天体機器はほとんど電気で動作しますし、撮影やEAAともなればPC含め更に接続機器が増えます。
その上、屋外での使用になりますので諸々注意が必要になります。

注意が必要な事項もありますので、項目に分けて記載します。


●メンテナンス、設置時にやってはいけないこと(重要)

1.屋外で使用時にバッテリーからの直接給電。

2.撮影などでPCを利用する際、遠征前のシステム、ドライバのアップデート

3.ガタ取りと称した架台ギア部分のクリアランス削除、与圧追加の調整

4.機器を土の上に直接設置、木の下などに設置しない。


順に説明します。
1についてはバッテリーとの間に安定化電源など安全装置が入った機器を通して接続しましょう。
一番危険なのが電源投入時の突入電流です。
そして、PCなどを使用する際に注意が必要なのが、使用する電力変化に伴う電圧降下です。

これらは、バッテリーに直接接続することで起きうるトラブルです。
安定化電源やポータブルバッテリーのAC入力を利用することで回避出来ます。(それらの機器に安全装置があるため)

架台とPCの基板にもヒューズが内蔵されていますが基板直付のものもありますので、遠征先でヒューズが切れたら使えなくなります。(基板のハンダ付けが必要になりますので。。。)

2については冷静に考えればわかることですが、アップデート時にドライバやシステムの設定が変更されてしまうと動作しなくなる場合があります。(かなり高い確率で動作不良になります。)
屋外という劣悪な環境で制御を行うので、動作確認が取れたセットアップのまま操作するのが最善ですが、もしアップデートなどを行う必要がある場合は(めったにないと思いますが。。。)現地で制御する全ての動作を自宅で事前に確認しておいたほうが良いです。

3についてはブログなどでも結構間違った情報が流布されている事項になります。
電動の架台はオートガイド時には構成追尾の0.5倍程度、自動導入時は架台によって異なりますが、構成追尾の数百倍~千数百倍で動作します。

私は以前使用していたセレストロン社のAdvancedGT赤道儀を分解修理したことがありますが、内部構造を見て驚きました。。。(シュミカセを分解修理したときも驚きましたが)

赤緯軸も赤経軸もアルミで、ギアがアルミ軸の削り出し。。。軸部分には薄いプラスチック板が敷かれていたり、巻かれていたりします。(これが、スラストベアリング。。。まあ、アルミ同士が直接触れるよりはマシでしょうが)

ギア駆動軸もボールベアリングが設置されていない場所もあります。。。
それらのギア機構をアルミ筐体にねじ付けです。(アルミは非常に温度による膨張変化が大きい金属です。)

AdvancedGT赤道儀に関してはガイド0.5倍~自動導入時駆動が960倍、実に1920倍の速度をこの脆弱なギア機構とモーターで駆動することになります。

ギアの取付部にはクリアランス調整機構がありますが、メーカー側は出荷時の動作確認で正常動作するようにクリアランスを現物合わせしているものと予想します。(じゃないとアルミのギアなんかあっという間に削れますし、軸も偏心します。。。)

自動導入機構がある架台はギア部のクリアランスが必須であることを念頭に起きましょう。

ここまで記載すればおわかりかと思いますが、ウォーム軸などアルミギアに接続されている部分のクリアランスをユーザーが勝手に調整したら(しかも大体の場合が与圧をかける方向に調整アルミギアの偏摩耗、軸の偏心などトラブルの元にしかなりません。。。(軸やギア全てににそれらの対策がなされていれば安全になるんですけどね。。。せめてギアは全て温度変化の少ない真鍮(砲金がベスト)にしてほしいです。(高額な機種はそうなのかな))

不幸中の幸いは暖かい屋内でこれらの作業をして、寒い屋外で使用するためアルミの温度変化で若干クリアランスが生まれていることです。

いずれにしても良くはありませんので、ギア部分(特にアルミギアと接する部分)のクリアランスはいじらないように注意してください。(削れたギアや、偏心したアルミ軸は二度と元には戻りません。。。)

4については上記3つの項目よりは深刻度がありませんが、設置時に気をつけた方が良い項目です。
架台を土の上に直接設置とかすると、沈み込みなどで安定しませんし地表からの水蒸気などで夜露のダメージの元になります。
アスファルトやコンクリート部分に設置すれば緩和されますが、それらが無い場合はシートを敷いた上に三脚足部分に板などを敷いて対策しましょう。

木の下は一見風などが防げて良さそうな気がしますが、落枝、花粉、落ち葉など精密機器である天体機器に悪影響を与えるものが大量に降り注ぐことになります。

長くなってしまいました。。。。今回はメンテナンスというよりは、注意事項ばかりになってしまいました。。。(まあ、それだけ注意することが多いとも言えます)
次回はメンテナンスや、準備事項などを記載しようと思います。

追記
AdvancedGT架台を分解修理した理由は架台が電気的に動かなくなり、AdvancedVXを購入したため後学のために行いました。(後に回路に組み込まれているヒューズが壊れているだけということがわかりましたが。。。)

シュミカセ同様非常に大雑把な作りで驚きましたが、上記のプラスチック板のベアリングなども全く同じ位置に配置しないと偏心したりと、雑な作りのようでもかなり現物合わせの調整がされていることも感じました。

架台の構造の詳細を公開しているメーカーはほとんど無いかと思います。
駆動軸全てにボールベアリングを使用していたり、ギア取付部に工夫がされているような架台であれば、メーカーアジャスト以降の運用はPCなどを利用する場合はソフト側で行った方が良い結果が出やすいように感じます。(そのような架台で無いとしても同様に感じます。バックラッシュなどはソフト側で追い込めますので。。)

分解調整したのでわかったとこですが、AdvancedGT架台では駆動軸に塗られているグリスも制御精度に大きな影響がありました。
最初に塗られていたものは鉱物油グリスでちょう度が高いものでしたが、気温による軸の摩擦が大きく変化が大きかったため、柔らかい化学合成グリスに変更した所、軸の回転も滑らかになり、オートガイドの精度が非常に高くなりました。(多分モーターが負けている状態だったと思います。皮肉なもので現在使用しているAdvancedVXよりかなりガイド精度が良いです。。。)
今回は設置時や、日常的に行っておくと効果が高いメンテナンスについて記載します。

簡単なことが多いので、今までしていなかった方はぜひ取り入れてみてください。

天体機器について

1.架台や鏡筒などの可動部を動かす。(ギアも含めて)

2.ホコリを払う(溜めない)

3.電源や制御端子の清掃


1については日常的に行うことも効果的ですが、特に設置時に行っておくと効果があります。
やり方としては以下

●架台の場合
・クランプを緩め軸を数回回転させる(回転の重さが変化する場合は変化がなくなるまで行う)
・クランプを締め、ハンドコントローラーなどで各方向軸を動かす。


●鏡筒などの場合
・フォーカサーなど可動部を動かす。

これらを行う理由は可動部に塗られているグリースの固着、ムラなどを改善することにあります。

特に架台に関しては軸のグリースの状態が精度に大きく影響します。

天体機器に塗られているグリースは固いものが多く、ほとんどが鉱物油が使用されています。
天体機器のように動かさない期間が長く、かつ使用する時は屋外という機材はグリースが劣化状態になっていることが多いため、動作確認的に各部を動かすことでグリースの固着やムラなどを改善することが出来ます。

特に架台の軸がアルミで、各軸のギアがアルミ製のものはグリースの状態が悪いと性能が低下します。

設置後はチェックも含め、可動部を動かしグリースをなじませるようにしてください。


2についてはホコリを溜めたまま屋外で機器を使用すると、ホコリに夜露が付着して、電子機器の不具合の原因になる可能性が高くなります。

エアーダスターでホコリを飛ばし、クリーニングクロスにスプレーボトルに入れた精製水を一吹き程度含ませ、清拭しましょう。(乾拭きは静電気でホコリをよびますので、ほんの僅かに湿らせたクリーニングクロスを使います。精製水を含ませすぎるのもNG)

3についてはIPAと綿棒などで端子部の汚れを取ります。
屋外で電子機器を動かす場合、電源と並んで多い不具合が接触不良になります。

市販品でカーボンオイルなどが使われた接点復活剤もありますが、屋外で使用するとかえってトラブルの原因になります。
IPA+綿棒などで接点表面を清拭して接点表面に不純物が無い状態にしておくことが最善です。

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PCについて

1.機器の制御チェックは家で行う

2.電源や制御端子の清掃

3.シリコン素材など低温で変質しないケーブルを準備


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1については以前INDIのセットアップ記事で記載しましたが、全ての天体機器を接続して問題なく制御出来るかを自宅で行いましょう。(とても重要なメンテナンスです、遠征時のトラブルで一番多いのがPCアプリでの制御と感じます。。。)

カメラを先に設定してから(昼の景色でカラー・ホワイトバランスなど)カメラ部をシミュレーションドライバに変更すれば全ての機器の制御確認が可能です。
自動導入、オートガイド、フォーカス・フィルター制御、撮影シーケンスなど現地で行うことを一通りチェックして問題無く動く状態にしておきましょう。

カメラのシミュレーションドライバによる動作確認は以前はINDI環境のみの機能でしたが、同様の確認方法がWindows・ASCOMでも可能になりました。(ASTAPでおなじみのハンが作ってくれました)

PCの場合は使用するアプリの動作チェックが重要な項目になるように感じています。

2については天体機器同様ですが、PCの場合はUSB端子への接続機器が多くなります。
ケーブル、端子共クリーニングして接触不良が起こらないようにメンテナンスしておきましょう。(USB機器などの接触不良は原因究明が困難ですので)

3のUSBケーブルは特に冬の屋外で使用する場合にトラブルが起きやすくなります。
通常のビニール皮膜のケーブルだと固くなり断線することがあります。シリコン素材など低温に対応した素材のケーブルを準備しておきましょう。

予備のケーブルも必須です。(ケーブル1本の不足や不具合で遠征が台無しになります。。。)

追伸
架台のグリースについては触れられている記事が少ないですが、架台の動作・精度に関して非常に大きな影響を与える要素と感じています。

天体機器のグリースは機器の不具合を恐れてか、硬めなものを使用している傾向があるように感じています。
鉱物油のグリースは気温変化で粘度などの特性が変化しますし、酸化もします。

屋外、しかも低速での精度を求められる天体機器だと温度特性も安定して変質しないシリコーンなどの化学合成グリースを使用してほしいところです。
特に軸やギアにアルミ素材が使われている架台などはかじらないように軸部にもグリスが塗布されていますので、低温時の固着や、経年劣化の変質(これも固着)などで制御精度の悪化に繋がるように感じています。
記事にも書きましたが、オートガイドの精度など事前駆動軸やギアを動かしてグリースをなじませると結構安定しますよ。(ウォーム軸のクリアランスを自分で変えていたらそれだけでは改善しないかもですが。。。)

文字だらけ(しかも全て長文)の非常に地味な特集になりましたが、記事をまとめてみて改めて考えさせられる部分が多い内容だったなと感じました。

殆どの場合、天体機器は保管期間が長く、使用する時はぶっつけ本番に近い状態になるように思います。

保管期間が長いので、定期的な清掃や、動作チェックをしておかないと現地でトラブって終わりということになりかねません。。。
このことからも、天体機器のメンテナンスの原則として

・光学系に関しては使用後はもちろんのこと、使わないときも定期的に清掃(異物の固着、ムラや拭きのこしがないように保つ)

・可動部のチェックは定期的に、使用前にも可動チェック

・PCでの制御に関しては全ての天体機器を接続し、動作確認済み状態を維持

・電子基板部のホコリや接点は汚れはこまめに清掃(使用前はチェック)

・遠征時はケーブルや工具、メンテナンス道具など所持(トラブっても治せるように)


今回の記事で記載した天体機器のメンテナンスに関しては、レンズ・反射鏡の清拭以外は大して技術は必要ありませんが、結構面倒な点検やメンテナンスが必要であると感じています。(なにせ非防水の機器類を屋外で使用するわけですし。。。屋外で使用したら夜露でびしょ濡れとかあります)

注意が必要なのは、メンテナンスに関してはしないままだとトラブルの原因になりますが、するにしても正しく行わないとこれまたトラブルの原因になるということです。(レンズ清拭でムラや吹き残しなどをおこすとカビや、クリーナーによってはコーティング損傷の原因になりますし、ギアなど(これは本来はユーザーが行わない)の調整はギア・モーターの破損に繋がります。PCでの制御チェックもしっかり行わないと明後日の方向に動き出し、最悪転倒→破損とかに見舞われる可能性があります。)

屋外使用する機器なので、外気に触れる光学系に関してはハードコートなどが施されていれば、かなりメンテナンスの労力が減るように感じています。(コーティングの弱さが清拭の難易度を更に上げる原因になっていますし、、双眼鏡や、フィールドスコープは防水機構やハードコートがされているものがほとんどです。)

撮影に使うとなると架台なども調整したい気持ちにも駆られますが、おそらくメーカー側で現物合わせで調整されているのでユーザーが下手に手を出すとかえってトラブルになるように感じます。。。

架台の機種によっては軸やギアまでアルミが使われているものがあるので、個人的には分解せずとも簡単に可動部の調整ができる調整機構くらいはついていてほしいと感じています。(アルミは温度による体積変化が大きい金属ですので、本来であれば使用環境の温度に合わせて調整が必要になるはずです。)

電子基板部に関しても、防水になっていませんので、ホコリまみれだとショートの危険がありますし、私の所有する架台などは基板部にヒューズがハンダ付けされていたので、バッテリーと接続する際、突入電流などが流れたらヒューズか切れて使えなくなります。。。

天体機器、PCなど全てが屋外で使用する機器としての対策がほとんどされていない状態なので、使用前、使用後のメンテナンスをユーザー側でしっかり行わないと非常にトラブルが出やすい状態であると感じます。

入門者にとってはとても敷居が高いですね。。。
前からずっと感じていることですが、天文趣味の裾野を広げるにはもっと気軽に始められる機器が必要じゃないかなと改めて感じました。(今の状況だとスマホの機能アップに期待かな。。。)


追記
自分自身ももっと気軽に天体に触れたいと感じて、ラズパイなどを利用したEAAやら高感度カメラ+Cマウントズームレンズを組み合わせてのリアルタイム観望などいろいろ画策してきましたが、天体用の機器で組み合わせようとするとどのように組み合わせてもケーブルだらけで気軽とは程遠いものになります。。。(高感度カメラ+Cマウントズームレンズの組み合わせの方がまだ楽ですが、業務機器なのでやはり専門知識も必要です。)

パーツを自由に組み合わせることが出来る一体機みたいなコンセプトの機材が出てきて欲しいところです。。。

メンテナンスから脱線しましたが、まあ、ノーメンテで気軽に楽しめる機器もあって欲しいなという願望ということで。。。。

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