メンテナンスシリーズの初回はレンズの清掃についてです。
望遠鏡や双眼鏡、カメラなど光学機器を購入した方がメンテナンスとして最初に気にする部分かと思います。
二歳の頃に親からカメラを渡され遊んでから早50数年(涙)、情報を集めながら自己流で行っている方法になります。
そのため、経験則的な内容になりますがこの方法で今まで光学面にカビが生えたこともありませんし、レンズや鏡面に傷をつけたこともありませんので、そこそこ安全な方法かと思います。
専門知識をお持ちの方はコメントいただけると幸いです。
清掃を行うにあたっていくつかマイルールとして原則的に守っていることがあります。
1.清掃の優先順位・重要度は焦点面に近いところから眼視であれば
接眼レンズ→フィルター(使用する場合)→レデューサーorバロー(使用する場合)→対物レンズ(または主鏡)撮影であれば
撮像素子→フィルター(使用する場合)→レデューサーorバロー(使用する場合)→対物レンズ(または主鏡)光軸調整においても同様ですが、
焦点面に近いレンズほど結像に顕著に影響を与えます。そのため、観望や撮影後には必ず焦点面に近いところからチェックして目に見えるホコリやチリなどがあった場合はエアーダスターで吹き飛ばします。
2.目視でレンズ面・撮像素子などにチリ・ホコリが見えない状態にしてから保管する。観望、撮影が終わったあと、片付けて室内に入ってからすぐに上記優先順位順に撮像素子やレンズを目視チェックします。
チリ・ホコリのような付着物が見えた場合はエアーダスターで
レンズ周辺部から中心に向けて吹き付けて飛ばします。
逆さにしてもガスが出ない商品を使いましょう。(初回は念のため逆さにして吹いて確かめます)
私はこれを頻繁に使用するため常時備蓄しています。
これでほとんどの場合は大丈夫ですが、稀に付着物が取れない場合があります。その場合は
付着物のある部分のみ湿式清掃に切り替えます。湿式清掃はケミカルを使用するため、付着物の成分に対する知識が必要です。
付着物となるものは大別して3種類あります。
有機物・オイルミスト
・花粉(無機物も若干含む)
・細菌、微生物(バクテリア、カビ、ウィルス、ダニなど)
成分は油、タンパク質、炭水化物など。
無機物・黄砂、粉塵、火山灰
成分は炭酸カルシウム、マグネシウム、シリカ、カーボン、金属化合物など
有機・無機混合物・化粧(マスカラ、パウダー、ファンデーションなど、油と顔料(無機物)の集合体)
・指紋(皮脂、タンパク質、炭水化物、ナトリウムなど)
・煤煙(カーボン、鉱物油を中心にありとあらゆる汚れが付着しています。。)
エアダスターで取れない汚れは残念ながら有機・無機混合物のしつこい汚れである場合が多いです。
有機物(特に油)が吸着源になることが非常に多いのですが、無機物であっても炭酸カルシウムなどはガラス成分のシリカと結合しやすく、堆積した場合非常に厄介なことになります。(俗に呼ばれる水アカです。炭酸カルシウム+シリカ+マグネシウムなどの複合体に成長します。)
私は以下のケミカルを使用しています。



原則として湿式清掃は
精製水で始まり、精製水で終わるを厳守しています。(IPAは主に精製水に混ぜて乾燥時間をコントロールするのに使用)
これらのケミカルを綿棒やトレシー、レーヨンで出来たクリーニングペーパー、脱脂綿に少量付けて汚れ部分のみポイントで撫でるように拭きます。(こするのは厳禁ですよ)




綿棒、クリーニングペーパー、トレシーなどは使い捨てにします。(トレシーは使いやすいサイズに切って使います。)
精製水、中性洗剤はかなり万能に使用できますが、
必ず洗浄成分を精製水できれいに拭き取りすることが重要になります。そうしないと、余剰成分がホコリなどの吸着源になります。ペーパーを購入する場合は原料に注意してください。パルプは繊維が硬いのでレーヨンやポリエステルの方が安全です。
油性や混合の汚れであっても初期段階であれば精製水で落ちます。(水は万能溶剤です)
湿式の場合は手袋もお忘れなく
注意が必要なのは細菌類(特にカビ)です。
私は一度だけカビが生えた鏡筒をヤフオクで購入したことがありますが、
カビなどの細菌は有機溶剤で処理しようとすると、脱脂されて固着します。(タンパク質、炭水化物、各種ミネラルを含んだ固着酸化物になります。。。)
カビなどの細菌類の汚れの場合のみ
中性の界面活性剤→精製水の順で部分洗いをします。(精製水から始めると菌糸を広げてしまいます。)
部分洗いが終わったあと、乾燥させてから全体に界面活性剤を馴染ませ、精製水で洗浄します。私がレンズ全面を洗浄する必要があると考える状態は以下になります。(数年に一度)
・夜露や霜でレンズ全体が湿ってしまったとき(水分でありとあらゆるゴミが付着します。)
・カビを発見した時(体験したのはヤフオク購入の一台のみです。。ショックでした)
夜露や霜の場合は乾燥後
エアーダスター→精製水→中性洗剤、もしくは溶剤→精製水でなで拭きします。
広い面積を施工する場合はトレシーなどのマイクロファイバー繊維が使いやすいです。
レンズ全面を洗浄する場合は必ずレンズ外面から中心に向けて円を描くように行っています。(特に外周部を念入りに、巷にあふれる情報と逆ですね)追記
カビは界面活性剤で死滅させることができます。界面活性剤で部分洗浄したあと全体も界面活性剤をかけて菌糸を撲滅してから精製水で流しましょう。
レンズの清拭で中心から外に円を描くようにという記述を見かけますが、この施工法はレンズセルからレンズを取り出し、レンズ単体をろくろのような機械でを回転させながら施工する方法になるのかなと感じています。(その機械を使用すると効率的に付着物をレンズ外に追い出せますので)
分解しないでこの方法で清拭するとレンズセル周辺部に付着物が堆積し、カビの原因になります。(レンズカビの写真で外側からカビが生えているのはこれが原因ですね)
分解しない清拭の場合はエアーダスターにしろ、湿式にしろ常に外周部からスタートして中心部にゴミを集めてから取り除くほうが付着物を減らすことができるように思います。
湿式で精製水、界面活性剤、溶剤の量に関しては若干湿る程度(すぐに乾く)が適量です。
唯一の例外がカビです。
界面活性剤をたっぷりつけ、カビを取り除いてから、精製水で徹底的にすすぎ、脱脂綿などで水滴を丁寧に吸い取り乾燥させてください。
その際、くれぐれも水道水を使わないようにしてください。(落とすことが困難な水垢の原因になります。)
さらに追記
私は所有する機器全てにお守りのように富士のカビ防止剤を対物レンズカバーの裏に貼っています。

いい加減な施工でも無事だったのは案外これのおかげかもしれませんね。
対物レンズに傷が入る原因は無機物が堆積した状態でこすることが原因と考えます。無機物はエアーダスターで簡単に飛んでくれますので(と、いうかほとんどの汚れが早期であればエアーダスターで飛びます)、日頃のメンテナンスはエアーダスター中心で終わらせています。
溶剤や界面活性剤でムラになるという方は表面上に有機物が残留しています。
再度溶剤で軽く拭き精製水で仕上げればムラが消えますよ。