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文字だらけ(しかも全て長文)の非常に地味な特集になりましたが、記事をまとめてみて改めて考えさせられる部分が多い内容だったなと感じました。

殆どの場合、天体機器は保管期間が長く、使用する時はぶっつけ本番に近い状態になるように思います。

保管期間が長いので、定期的な清掃や、動作チェックをしておかないと現地でトラブって終わりということになりかねません。。。
このことからも、天体機器のメンテナンスの原則として

・光学系に関しては使用後はもちろんのこと、使わないときも定期的に清掃(異物の固着、ムラや拭きのこしがないように保つ)

・可動部のチェックは定期的に、使用前にも可動チェック

・PCでの制御に関しては全ての天体機器を接続し、動作確認済み状態を維持

・電子基板部のホコリや接点は汚れはこまめに清掃(使用前はチェック)

・遠征時はケーブルや工具、メンテナンス道具など所持(トラブっても治せるように)


今回の記事で記載した天体機器のメンテナンスに関しては、レンズ・反射鏡の清拭以外は大して技術は必要ありませんが、結構面倒な点検やメンテナンスが必要であると感じています。(なにせ非防水の機器類を屋外で使用するわけですし。。。屋外で使用したら夜露でびしょ濡れとかあります)

注意が必要なのは、メンテナンスに関してはしないままだとトラブルの原因になりますが、するにしても正しく行わないとこれまたトラブルの原因になるということです。(レンズ清拭でムラや吹き残しなどをおこすとカビや、クリーナーによってはコーティング損傷の原因になりますし、ギアなど(これは本来はユーザーが行わない)の調整はギア・モーターの破損に繋がります。PCでの制御チェックもしっかり行わないと明後日の方向に動き出し、最悪転倒→破損とかに見舞われる可能性があります。)

屋外使用する機器なので、外気に触れる光学系に関してはハードコートなどが施されていれば、かなりメンテナンスの労力が減るように感じています。(コーティングの弱さが清拭の難易度を更に上げる原因になっていますし、、双眼鏡や、フィールドスコープは防水機構やハードコートがされているものがほとんどです。)

撮影に使うとなると架台なども調整したい気持ちにも駆られますが、おそらくメーカー側で現物合わせで調整されているのでユーザーが下手に手を出すとかえってトラブルになるように感じます。。。

架台の機種によっては軸やギアまでアルミが使われているものがあるので、個人的には分解せずとも簡単に可動部の調整ができる調整機構くらいはついていてほしいと感じています。(アルミは温度による体積変化が大きい金属ですので、本来であれば使用環境の温度に合わせて調整が必要になるはずです。)

電子基板部に関しても、防水になっていませんので、ホコリまみれだとショートの危険がありますし、私の所有する架台などは基板部にヒューズがハンダ付けされていたので、バッテリーと接続する際、突入電流などが流れたらヒューズか切れて使えなくなります。。。

天体機器、PCなど全てが屋外で使用する機器としての対策がほとんどされていない状態なので、使用前、使用後のメンテナンスをユーザー側でしっかり行わないと非常にトラブルが出やすい状態であると感じます。

入門者にとってはとても敷居が高いですね。。。
前からずっと感じていることですが、天文趣味の裾野を広げるにはもっと気軽に始められる機器が必要じゃないかなと改めて感じました。(今の状況だとスマホの機能アップに期待かな。。。)


追記
自分自身ももっと気軽に天体に触れたいと感じて、ラズパイなどを利用したEAAやら高感度カメラ+Cマウントズームレンズを組み合わせてのリアルタイム観望などいろいろ画策してきましたが、天体用の機器で組み合わせようとするとどのように組み合わせてもケーブルだらけで気軽とは程遠いものになります。。。(高感度カメラ+Cマウントズームレンズの組み合わせの方がまだ楽ですが、業務機器なのでやはり専門知識も必要です。)

パーツを自由に組み合わせることが出来る一体機みたいなコンセプトの機材が出てきて欲しいところです。。。

メンテナンスから脱線しましたが、まあ、ノーメンテで気軽に楽しめる機器もあって欲しいなという願望ということで。。。。

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今回は設置時や、日常的に行っておくと効果が高いメンテナンスについて記載します。

簡単なことが多いので、今までしていなかった方はぜひ取り入れてみてください。

天体機器について

1.架台や鏡筒などの可動部を動かす。(ギアも含めて)

2.ホコリを払う(溜めない)

3.電源や制御端子の清掃


1については日常的に行うことも効果的ですが、特に設置時に行っておくと効果があります。
やり方としては以下

●架台の場合
・クランプを緩め軸を数回回転させる(回転の重さが変化する場合は変化がなくなるまで行う)
・クランプを締め、ハンドコントローラーなどで各方向軸を動かす。


●鏡筒などの場合
・フォーカサーなど可動部を動かす。

これらを行う理由は可動部に塗られているグリースの固着、ムラなどを改善することにあります。

特に架台に関しては軸のグリースの状態が精度に大きく影響します。

天体機器に塗られているグリースは固いものが多く、ほとんどが鉱物油が使用されています。
天体機器のように動かさない期間が長く、かつ使用する時は屋外という機材はグリースが劣化状態になっていることが多いため、動作確認的に各部を動かすことでグリースの固着やムラなどを改善することが出来ます。

特に架台の軸がアルミで、各軸のギアがアルミ製のものはグリースの状態が悪いと性能が低下します。

設置後はチェックも含め、可動部を動かしグリースをなじませるようにしてください。


2についてはホコリを溜めたまま屋外で機器を使用すると、ホコリに夜露が付着して、電子機器の不具合の原因になる可能性が高くなります。

エアーダスターでホコリを飛ばし、クリーニングクロスにスプレーボトルに入れた精製水を一吹き程度含ませ、清拭しましょう。(乾拭きは静電気でホコリをよびますので、ほんの僅かに湿らせたクリーニングクロスを使います。精製水を含ませすぎるのもNG)

3についてはIPAと綿棒などで端子部の汚れを取ります。
屋外で電子機器を動かす場合、電源と並んで多い不具合が接触不良になります。

市販品でカーボンオイルなどが使われた接点復活剤もありますが、屋外で使用するとかえってトラブルの原因になります。
IPA+綿棒などで接点表面を清拭して接点表面に不純物が無い状態にしておくことが最善です。

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IPA、レンズクリーナー、精製水などを小さなスプレーボトルに入れ、クリーニングクロス、エアーダスター、綿棒、レンチなどの工具とともに常備しておくと便利です。


PCについて

1.機器の制御チェックは家で行う

2.電源や制御端子の清掃

3.シリコン素材など低温で変質しないケーブルを準備


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1については以前INDIのセットアップ記事で記載しましたが、全ての天体機器を接続して問題なく制御出来るかを自宅で行いましょう。(とても重要なメンテナンスです、遠征時のトラブルで一番多いのがPCアプリでの制御と感じます。。。)

カメラを先に設定してから(昼の景色でカラー・ホワイトバランスなど)カメラ部をシミュレーションドライバに変更すれば全ての機器の制御確認が可能です。
自動導入、オートガイド、フォーカス・フィルター制御、撮影シーケンスなど現地で行うことを一通りチェックして問題無く動く状態にしておきましょう。

カメラのシミュレーションドライバによる動作確認は以前はINDI環境のみの機能でしたが、同様の確認方法がWindows・ASCOMでも可能になりました。(ASTAPでおなじみのハンが作ってくれました)

PCの場合は使用するアプリの動作チェックが重要な項目になるように感じています。

2については天体機器同様ですが、PCの場合はUSB端子への接続機器が多くなります。
ケーブル、端子共クリーニングして接触不良が起こらないようにメンテナンスしておきましょう。(USB機器などの接触不良は原因究明が困難ですので)

3のUSBケーブルは特に冬の屋外で使用する場合にトラブルが起きやすくなります。
通常のビニール皮膜のケーブルだと固くなり断線することがあります。シリコン素材など低温に対応した素材のケーブルを準備しておきましょう。

予備のケーブルも必須です。(ケーブル1本の不足や不具合で遠征が台無しになります。。。)

追伸
架台のグリースについては触れられている記事が少ないですが、架台の動作・精度に関して非常に大きな影響を与える要素と感じています。

天体機器のグリースは機器の不具合を恐れてか、硬めなものを使用している傾向があるように感じています。
鉱物油のグリースは気温変化で粘度などの特性が変化しますし、酸化もします。

屋外、しかも低速での精度を求められる天体機器だと温度特性も安定して変質しないシリコーンなどの化学合成グリースを使用してほしいところです。
特に軸やギアにアルミ素材が使われている架台などはかじらないように軸部にもグリスが塗布されていますので、低温時の固着や、経年劣化の変質(これも固着)などで制御精度の悪化に繋がるように感じています。
記事にも書きましたが、オートガイドの精度など事前駆動軸やギアを動かしてグリースをなじませると結構安定しますよ。(ウォーム軸のクリアランスを自分で変えていたらそれだけでは改善しないかもですが。。。)

特集しているメンテナンスシリーズですが、今回は観望、もしくは撮影時に天体機器を組立てる際や、日常的な取り扱い時の注意事項やメンテナンスを記載します。

昨今の天体機器はほとんど電気で動作しますし、撮影やEAAともなればPC含め更に接続機器が増えます。
その上、屋外での使用になりますので諸々注意が必要になります。

注意が必要な事項もありますので、項目に分けて記載します。


●メンテナンス、設置時にやってはいけないこと(重要)

1.屋外で使用時にバッテリーからの直接給電。

2.撮影などでPCを利用する際、遠征前のシステム、ドライバのアップデート

3.ガタ取りと称した架台ギア部分のクリアランス削除、与圧追加の調整

4.機器を土の上に直接設置、木の下などに設置しない。


順に説明します。
1についてはバッテリーとの間に安定化電源など安全装置が入った機器を通して接続しましょう。
一番危険なのが電源投入時の突入電流です。
そして、PCなどを使用する際に注意が必要なのが、使用する電力変化に伴う電圧降下です。

これらは、バッテリーに直接接続することで起きうるトラブルです。
安定化電源やポータブルバッテリーのAC入力を利用することで回避出来ます。(それらの機器に安全装置があるため)

架台とPCの基板にもヒューズが内蔵されていますが基板直付のものもありますので、遠征先でヒューズが切れたら使えなくなります。(基板のハンダ付けが必要になりますので。。。)

2については冷静に考えればわかることですが、アップデート時にドライバやシステムの設定が変更されてしまうと動作しなくなる場合があります。(かなり高い確率で動作不良になります。)
屋外という劣悪な環境で制御を行うので、動作確認が取れたセットアップのまま操作するのが最善ですが、もしアップデートなどを行う必要がある場合は(めったにないと思いますが。。。)現地で制御する全ての動作を自宅で事前に確認しておいたほうが良いです。

3についてはブログなどでも結構間違った情報が流布されている事項になります。
電動の架台はオートガイド時には構成追尾の0.5倍程度、自動導入時は架台によって異なりますが、構成追尾の数百倍~千数百倍で動作します。

私は以前使用していたセレストロン社のAdvancedGT赤道儀を分解修理したことがありますが、内部構造を見て驚きました。。。(シュミカセを分解修理したときも驚きましたが)

赤緯軸も赤経軸もアルミで、ギアがアルミ軸の削り出し。。。軸部分には薄いプラスチック板が敷かれていたり、巻かれていたりします。(これが、スラストベアリング。。。まあ、アルミ同士が直接触れるよりはマシでしょうが)

ギア駆動軸もボールベアリングが設置されていない場所もあります。。。
それらのギア機構をアルミ筐体にねじ付けです。(アルミは非常に温度による膨張変化が大きい金属です。)

AdvancedGT赤道儀に関してはガイド0.5倍~自動導入時駆動が960倍、実に1920倍の速度をこの脆弱なギア機構とモーターで駆動することになります。

ギアの取付部にはクリアランス調整機構がありますが、メーカー側は出荷時の動作確認で正常動作するようにクリアランスを現物合わせしているものと予想します。(じゃないとアルミのギアなんかあっという間に削れますし、軸も偏心します。。。)

自動導入機構がある架台はギア部のクリアランスが必須であることを念頭に起きましょう。

ここまで記載すればおわかりかと思いますが、ウォーム軸などアルミギアに接続されている部分のクリアランスをユーザーが勝手に調整したら(しかも大体の場合が与圧をかける方向に調整アルミギアの偏摩耗、軸の偏心などトラブルの元にしかなりません。。。(軸やギア全てににそれらの対策がなされていれば安全になるんですけどね。。。せめてギアは全て温度変化の少ない真鍮(砲金がベスト)にしてほしいです。(高額な機種はそうなのかな))

不幸中の幸いは暖かい屋内でこれらの作業をして、寒い屋外で使用するためアルミの温度変化で若干クリアランスが生まれていることです。

いずれにしても良くはありませんので、ギア部分(特にアルミギアと接する部分)のクリアランスはいじらないように注意してください。(削れたギアや、偏心したアルミ軸は二度と元には戻りません。。。)

4については上記3つの項目よりは深刻度がありませんが、設置時に気をつけた方が良い項目です。
架台を土の上に直接設置とかすると、沈み込みなどで安定しませんし地表からの水蒸気などで夜露のダメージの元になります。
アスファルトやコンクリート部分に設置すれば緩和されますが、それらが無い場合はシートを敷いた上に三脚足部分に板などを敷いて対策しましょう。

木の下は一見風などが防げて良さそうな気がしますが、落枝、花粉、落ち葉など精密機器である天体機器に悪影響を与えるものが大量に降り注ぐことになります。

長くなってしまいました。。。。今回はメンテナンスというよりは、注意事項ばかりになってしまいました。。。(まあ、それだけ注意することが多いとも言えます)
次回はメンテナンスや、準備事項などを記載しようと思います。

追記
AdvancedGT架台を分解修理した理由は架台が電気的に動かなくなり、AdvancedVXを購入したため後学のために行いました。(後に回路に組み込まれているヒューズが壊れているだけということがわかりましたが。。。)

シュミカセ同様非常に大雑把な作りで驚きましたが、上記のプラスチック板のベアリングなども全く同じ位置に配置しないと偏心したりと、雑な作りのようでもかなり現物合わせの調整がされていることも感じました。

架台の構造の詳細を公開しているメーカーはほとんど無いかと思います。
駆動軸全てにボールベアリングを使用していたり、ギア取付部に工夫がされているような架台であれば、メーカーアジャスト以降の運用はPCなどを利用する場合はソフト側で行った方が良い結果が出やすいように感じます。(そのような架台で無いとしても同様に感じます。バックラッシュなどはソフト側で追い込めますので。。)

分解調整したのでわかったとこですが、AdvancedGT架台では駆動軸に塗られているグリスも制御精度に大きな影響がありました。
最初に塗られていたものは鉱物油グリスでちょう度が高いものでしたが、気温による軸の摩擦が大きく変化が大きかったため、柔らかい化学合成グリスに変更した所、軸の回転も滑らかになり、オートガイドの精度が非常に高くなりました。(多分モーターが負けている状態だったと思います。皮肉なもので現在使用しているAdvancedVXよりかなりガイド精度が良いです。。。)
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