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20230616-1.jpg

上記画像は以前撮影した多段露光ライブスタッキングを画像処理したものです。
この時使用したカメラはASI224ですが、飽和電荷量が低いため、非常にピーキーなカメラです。(スイートスポットが狭い)
このようなカメラには特に多段露光が有効になります。(画素数が少ないのでどうしても輝星は太りますが。。。)

以前ライブスタッキング時に多重露光を行うと手軽にシグナル量を増やすことが出来るため効果的と記載しましたが、どのように画像処理していくのかを記載していませんでしたので覚書として記します。

大原則となる事項がいくつかありますのでその部分をまず最初に記載します。

・メインとなる適正露出画像をベースにして、アンダー(半分の露出時間)とオーバー(倍の露出時間)に変更しスタッキングする。(スタッキング枚数は適正露出、アンダー、オーバー全て同じが楽)
・ダークを取得する場合は最低オーバー画像を一枚(理想は露出秒毎)
・スタッキングは16ビット空間以上で行い、16ビットファイルで書き出す。


まず最も大切なことは撮影する対象が適正露出となる露出量を見つけ出す事になります。
撮影の場合はゲイン0でチェックしますが、経緯台を使用したライブスタックの場合ゲイン0では露出時間が長くなりすぎると思いますので、ゲインを上げます。(なので経緯台のライブスタッキングの場合はゲイン0で換算した場合には全てアンダーです。)

ゲインを上げた状態でヒストグラムの偏りが無くバランスが取れた画像(ゲインを上げているのでノイズは多い)をベースとして、倍の露出量(オーバー)、半分の露出量(アンダー)の画像もスタッキングしていきます。

適正露出、アンダー、オーバーのスタッキング枚数が同じ場合は画面上では適正露出の画像に近い状態で見えます。(モニター上では平均化されているため変化があまり見えませんが、見えないだけでシグナル量は確実に増えています)

この際、スタッキング枚数を増やせば暗電流ノイズとリードノイズを平均化出来ますので後ほどの画像処理でシグナルを取得しやすくなります。

スタッキング後は16ビットファイル(FITSやTIFF)として書き出します。

私の場合はこのファイルをKStarsのFITSビューアで開きます。

スクリーンショット 2023-06-17 000156

このビューアはSEPを用いてFITS画像の星の識別が行いやすいように自動で画像処理(オートストレッチ+α)がされて表示されますので見ながら調節しやすいです。(ライブスタッキングの場合は特に、先程述べたようにゲインを上げてオートストレッチなどを行い、モニタ上では適切に見えていても実際のデータはライブスタッキングではアンダー傾向になりますので通常は暗めになります。)
この状態で赤枠部分のスライダーを動かしてアンダー、適正露出、オーバーの画像をPNGに書き出します。

20230616-5.jpg
20230616-4.jpg

今回は4つ星部分がありましたので、ドアンダー画像、アンダー画像を2枚書き出しました。
この二枚の画像は4つ星部分と輝星の中心部分の情報になります。


20230616-2.jpg

次は適正露出として見える画像を書き出します。
中心部分や輝星は飽和していますが、全体的なバランスはこの画像に近くなるように後ほど調整します。


20230616-3.jpg

最後にオーバー画像を書き出します。
この画像はガス雲の細部情報の情報として利用します。


今回は4枚でしたが、欲しい情報に合わせてスライダーを調整して書き出します。

書き出しが終わったらフォトショップなどレイヤーが使用できる画像処理ソフトで開き、今書きだした4枚の画像をレイヤーとして重ねます。


2023-06-17 001726

今回は4枚なので、それぞれの透明度を25%にします。

これで4枚の画像の情報が均等に含まれた画像が出来ましたので、この段階でTIFFかビットマップに書き出します。

書き出した画像を開き、色調整、レベル調整、場合によってはレイヤーとして複製してレイヤー合成などを行って仕上げます。

仕上げは最終出力に合わせて調整します。(モニター、インクジェット、商業印刷、印画紙など)
最終出力の中で最も情報が広く見えるのはモニターですが、モニター含め最終出力は全て8ビットカラーなので、フォトショップでの作業は8ビットで構いません。

画像処理が困難になる原因の一つは最も情報が多く見えるモニターでも16ビットファイルの場合1/256(それ以下)の情報量しか確認できないため、見えない状態で作業を行うことが多くなることです。

常にモニターでシグナルが見える状態で作業を行うワークフローにすれば失敗することが少なくなります。

今回ご説明した方法はライブスタッキングで16ビットという広い空間に露出時間を変えながらシグナル情報の多い16ビット画像(シグナルデータバンク)を作り、その画像から8ビットの狭い色空間に効果的にまとめるために欲しい情報を分割して取り出して、合成でまとめるというものになります。


ライブスタッキングだけでは無く、天体撮影にも使える方法(撮影の場合は露出時間毎に加算平均でスタッキングして、BMPなどにそれぞれ書き出します。(加算ではありません))です。画像処理が苦手な方でもモニタを見ながら処理出来ますので簡単ですよ。

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かれこれ天文を趣味にして20年くらい(間に25年位の中断期間がありますが。。。)経過していますが、機材を使用した際の視野角の重要性に気づいたのは当地に引っ越してきてからの取り組みがきっかけでした。

木に囲まれて非常に視野が狭いため、それまでベランダで行っていた撮影が出来なくなってしまいました。
そのため移動に便利で狭い視野でも楽しめるEAA(電視観望)環境に着目し、当地の環境でも快適に観望出来るよう色々と試行錯誤しました。

その取組みの中、Aliexpressで購入できる12mm~120mmのCマウントレンズ※と、IMX385の撮像素子(1/2インチ)を使用した高感度カメラと組み合わせると、広角側で星座双眼鏡、望遠側で対空双眼鏡の視野とほとんど同じということが事前のシミュレーションでわかりました。
実際どのように見えるのか興味があったため購入して検証しました。(天体用の惑星カメラも同程度の撮像素子を利用しているものがあります。)

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双眼鏡に関しては上記いづれも旧型を所有して利用していますが、双眼鏡の良さに気づいたのも趣味を再開してから数年経過してからです。(両目で見ると非常に良く見えて、低倍率だと気軽に多くの対象が楽しめました。そのことに気付く前はお決まりの大口径病患者でした。)
いずれの機材も一部のマニアが楽しむ機材でしたが、上記Cマウントレンズと高感度カメラ惑星用の天体カメラ(撮像素子1/3~1/2))を接続すると、視野がほとんど同じなのに、眼視用の双眼鏡より3~4等級暗い(空の状態が悪いと更に)対象が見えたことに驚きました。(画質はイマイチですがメジャーな対象のほとんどをリアルタイムで見ることが出来ます。)

そうなってくると今まであまり意識していなかった30°という視野角が非常に大きな意味を持つことになりました。
以前複数の視野角を見比べる検証をしてみましたが、圧倒的に便利だったのが30°の視野です。

・多くの星座が視野内にすっぽり入る
・星座周辺のメジャーな星雲・星団が小さいながらもちゃんと見える(しかも正立像で)
・星空で迷子にならない(室内からリモートで操作していても迷いません)
・見たい対象を真ん中にすれば望遠鏡でも大体見える(優秀なファインダーになる)


星座双眼鏡も2等星が見えるか見えないかくらいの光害地域で星座が見えるようになるので重宝していましたが、デジタルの力を借りると視野角30°という天文界では超広角の視野でも小さいながらもメジャーな星雲・星団が見えます。

30°というと人間の視界より大分狭いのですが、違和感無く対象を探せます。
これには理由があります。
人間の視界は120~150°とか言われていますが、これはあくまで測定したときの値であって、実際には目的に応じて視野を可変しているからです。

・目を向ける→90°
・意識して見る→40~60°
・集中して見る(車の運転やPC操作など)→20~30°


30°という視野角は人間が集中して見ている時の視野角になります。

そのため、この視野角に対して違和感なく見ることができるというわけです。

それに加えてデジタルの力を借りて人間の目より数段暗いものが正立像で見える(目的の天体が見える)状態が出来れば迷わず対象を導入することが可能になります。(なにせ見えていますから。。。正立像なので、操作に対しての表示も直感的です。今までは対象が見えない上に、頼りのファインダーの視野が狭く、上下左右反対(しかもファインダーでも見えない対象が多い)だったから苦労したわけです。)

大型機材の導入支援にも使えますし、カメラ・レンズを使用した直焦点撮影のガイドにも使えます。
上記Cマウントレンズのように望遠側を120mmにできれば、観望にも直焦点撮影のガイドにも使えます。
今まで構築した全ての導入支援機構(DSC、PlateSolving、自動導入など)と比べても圧倒的に楽だったので、ファインダー台座につけて全ての環境で使用出来るようにしました。(高感度カメラ+電動ズームレンスのシステムは広角側が30°のため不要です。)

おそらくもう少しすれば、この画角を高感度で利用できるスマホも登場してくるでしょう。(すでにあるかも)

これから天文趣味を始める人であれば個人的には全てセットになった廉価なスマート望遠鏡が一番楽にスタート出来る製品になるかと思いますが、30°の視野角であれば既存のスマホでも星座双眼鏡をコリメートして、長時間露光に対応したアプリを使用するなどちょっと工夫すれば実現できそうです。

夜空には沢山の魅力的な天体があります。。。。が、天体によって見えるサイズが全く異なる上、メジャーな対象でも見えないくらい暗いため、実際に見たい対象を見つけるのはかなりの技術が必要でした。
しかし、デジタルを活用して30°という広い視野であればメジャーな対象は小さいながらもほとんど見えます。(大きく見たい場合は対象の大きさに合わせて別の機材が必要になりますが、メジャーな対象の多くは3~60倍程度の倍率で楽しめます。(星雲・星団などは集光力の方が重要な場合が多いです。)、眼視で楽しむ場合2~300倍など強度の拡大率が必要な対象は一部の惑星くらいです。(はっきり言えば土星と月、よくて木星くらいです))

感度が高い撮像素子によって眼視では一部のマニアを除き、あまり着目されていなかった30°という視野角が入門者から上級者まで多用途に有効利用できるものに変化しました。(対象導入、オートガイド、EAAなど)

これから天文を始めたい方、大型機材、PCアプリなどの運用などでうんざりしたマニアの方、いずれの方にとっても有用に利用できますので興味ある方はお試しください。(上記リンクにこの辺りの取り組みは多数記載しています。)

※記事で紹介したレンズはCマウントレンズになります。全く同じサイズでCSマウント(ZWO社の天体カメラはCSマウントになっています)がありますので注意してください。

CマウントレンズをCSマウントのカメラで使用する場合はCマウントアダプターを利用しないと性能が発揮出来ません。(フランジバックがCマウント→17.5mm、CSマウント→12.5mmと5mmも違います。非球面レンズで収差補正している高性能なレンズほど悪影響が出ます。)

追記
30°の視野ってこのくらいになります。(上記高感度カメラの無加工映像、肉眼ではカシオペアがかろうじてわかるくらいの空(当然肉眼では二重星団は見えません))

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二重星団見えてますね。(ファインダーのように望遠鏡と同架して真ん中に持ってくれば導入支援に使えます。)
個人的にはこれをスマホのアプリとかで


003.jpg

こんなことや(星座線や星団名表示)


005.jpg

こんなこと(プラネタリウムアプリに貼り付け)が出来ると楽しそうですし、初心者の方の勉強にもなりそうです。
ちなみにプラネタリウムアプリの視野角は60°に設定してあるので非常に自然に目的の天体を探すことが出来ると思います。
現状だとPCでいくつかの手順踏めば出来ますが、スマホで撮影→ボタン一つでこのように表示させることが出来れば楽ですね。
(PCのアプリを現地で細々使うのは面倒です。。。)


ここに来て天文趣味に便利なスマホアプリが多数登場していますが、ついにライブスタッキングもiOS、アンドロイド共登場してきました。
これで、プラネタリウム、PlateSolving、センサーを利用した導入支援、ライブスタッキングがスマホアプリだけで完結してしまいます。

アマゾンなどでそこそこ使えそうな中華スマホが1万4~5千円で購入できますので天体用簡易端末として利用するのもありかもしれません。

スマホ用ライブスタッキングアプリ

●AstroShader(iOS版)

内蔵カメラの機能を拡張してライブスタッキング機能に対応。
ちょっと試してみましたが、露出、フォーカスやISO、ホワイトバランスなどを簡単に調整でき、設定にプレビューも追従してくれるので暗いところでも非常に見やすいです。

このプレビュー機能だけでも利用する価値があります。

ライブスタッキングは連射扱いで撮影されます。
一枚の16ビットTIFFに保存されます。

スマホのカメラのみで完結できるし、スマホカメラを簡易高感度カメラのように利用できるのでなかなか使いやすいです。


●OpenLiveStacker(アンドロイド版)

こちらは以前紹介しましたが、アンドロイドスマホでUVC、ZWO社のカメラが使用出来るライブスタッキングアプリです。
まだストアに登録されていないので上記リンク先からダウンロードして使用(いわゆる野良アプリ)になりますが、UVC、ZWO社のカメラに対応していますので(本体カメラは現在は未対応)結構本格的にスタッキング撮影が可能です。
更にPlateSolving用にアンドロイド版のASTAPCLIを内蔵していますのでPlateSolvingによる導入支援も可能です。

外部カメラ利用なのでスマホ側にUSBOTG対応とTypeCUSBハブが必要です。

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スマホがPD充電にも対応していれば上記のような多機能ハブを利用すればカメラの接続+充電+SDカード追加+有線LAN接続などPCのように利用出来ます。

今の学生とかはPCより圧倒的にスマホに慣れているようなので、スマホから天文に興味を持つということもありそうです。

私自身も気軽に観望出来る環境は大歓迎なので、更に充実してほしいなと感じています。

プロフィール

TーStudio

Author:TーStudio
色々工夫しながら星空を楽しんでいます。
興味あるカテゴリを選択してお楽しみください。

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