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特集:天体機器のメンテナンスについて-観望、撮影前のチェック事項

特集しているメンテナンスシリーズですが、今回は観望、もしくは撮影時に天体機器を組立てる際や、日常的な取り扱い時の注意事項やメンテナンスを記載します。

昨今の天体機器はほとんど電気で動作しますし、撮影やEAAともなればPC含め更に接続機器が増えます。
その上、屋外での使用になりますので諸々注意が必要になります。

注意が必要な事項もありますので、項目に分けて記載します。


●メンテナンス、設置時にやってはいけないこと(重要)

1.屋外で使用時にバッテリーからの直接給電。

2.撮影などでPCを利用する際、遠征前のシステム、ドライバのアップデート

3.ガタ取りと称した架台ギア部分のクリアランス削除、与圧追加の調整

4.機器を土の上に直接設置、木の下などに設置しない。


順に説明します。
1についてはバッテリーとの間に安定化電源など安全装置が入った機器を通して接続しましょう。
一番危険なのが電源投入時の突入電流です。
そして、PCなどを使用する際に注意が必要なのが、使用する電力変化に伴う電圧降下です。

これらは、バッテリーに直接接続することで起きうるトラブルです。
安定化電源やポータブルバッテリーのAC入力を利用することで回避出来ます。(それらの機器に安全装置があるため)

架台とPCの基板にもヒューズが内蔵されていますが基板直付のものもありますので、遠征先でヒューズが切れたら使えなくなります。(基板のハンダ付けが必要になりますので。。。)

2については冷静に考えればわかることですが、アップデート時にドライバやシステムの設定が変更されてしまうと動作しなくなる場合があります。(かなり高い確率で動作不良になります。)
屋外という劣悪な環境で制御を行うので、動作確認が取れたセットアップのまま操作するのが最善ですが、もしアップデートなどを行う必要がある場合は(めったにないと思いますが。。。)現地で制御する全ての動作を自宅で事前に確認しておいたほうが良いです。

3についてはブログなどでも結構間違った情報が流布されている事項になります。
電動の架台はオートガイド時には構成追尾の0.5倍程度、自動導入時は架台によって異なりますが、構成追尾の数百倍~千数百倍で動作します。

私は以前使用していたセレストロン社のAdvancedGT赤道儀を分解修理したことがありますが、内部構造を見て驚きました。。。(シュミカセを分解修理したときも驚きましたが)

赤緯軸も赤経軸もアルミで、ギアがアルミ軸の削り出し。。。軸部分には薄いプラスチック板が敷かれていたり、巻かれていたりします。(これが、スラストベアリング。。。まあ、アルミ同士が直接触れるよりはマシでしょうが)

ギア駆動軸もボールベアリングが設置されていない場所もあります。。。
それらのギア機構をアルミ筐体にねじ付けです。(アルミは非常に温度による膨張変化が大きい金属です。)

AdvancedGT赤道儀に関してはガイド0.5倍~自動導入時駆動が960倍、実に1920倍の速度をこの脆弱なギア機構とモーターで駆動することになります。

ギアの取付部にはクリアランス調整機構がありますが、メーカー側は出荷時の動作確認で正常動作するようにクリアランスを現物合わせしているものと予想します。(じゃないとアルミのギアなんかあっという間に削れますし、軸も偏心します。。。)

自動導入機構がある架台はギア部のクリアランスが必須であることを念頭に起きましょう。

ここまで記載すればおわかりかと思いますが、ウォーム軸などアルミギアに接続されている部分のクリアランスをユーザーが勝手に調整したら(しかも大体の場合が与圧をかける方向に調整アルミギアの偏摩耗、軸の偏心などトラブルの元にしかなりません。。。(軸やギア全てににそれらの対策がなされていれば安全になるんですけどね。。。せめてギアは全て温度変化の少ない真鍮(砲金がベスト)にしてほしいです。(高額な機種はそうなのかな))

不幸中の幸いは暖かい屋内でこれらの作業をして、寒い屋外で使用するためアルミの温度変化で若干クリアランスが生まれていることです。

いずれにしても良くはありませんので、ギア部分(特にアルミギアと接する部分)のクリアランスはいじらないように注意してください。(削れたギアや、偏心したアルミ軸は二度と元には戻りません。。。)

4については上記3つの項目よりは深刻度がありませんが、設置時に気をつけた方が良い項目です。
架台を土の上に直接設置とかすると、沈み込みなどで安定しませんし地表からの水蒸気などで夜露のダメージの元になります。
アスファルトやコンクリート部分に設置すれば緩和されますが、それらが無い場合はシートを敷いた上に三脚足部分に板などを敷いて対策しましょう。

木の下は一見風などが防げて良さそうな気がしますが、落枝、花粉、落ち葉など精密機器である天体機器に悪影響を与えるものが大量に降り注ぐことになります。

長くなってしまいました。。。。今回はメンテナンスというよりは、注意事項ばかりになってしまいました。。。(まあ、それだけ注意することが多いとも言えます)
次回はメンテナンスや、準備事項などを記載しようと思います。

追記
AdvancedGT架台を分解修理した理由は架台が電気的に動かなくなり、AdvancedVXを購入したため後学のために行いました。(後に回路に組み込まれているヒューズが壊れているだけということがわかりましたが。。。)

シュミカセ同様非常に大雑把な作りで驚きましたが、上記のプラスチック板のベアリングなども全く同じ位置に配置しないと偏心したりと、雑な作りのようでもかなり現物合わせの調整がされていることも感じました。

架台の構造の詳細を公開しているメーカーはほとんど無いかと思います。
駆動軸全てにボールベアリングを使用していたり、ギア取付部に工夫がされているような架台であれば、メーカーアジャスト以降の運用はPCなどを利用する場合はソフト側で行った方が良い結果が出やすいように感じます。(そのような架台で無いとしても同様に感じます。バックラッシュなどはソフト側で追い込めますので。。)

分解調整したのでわかったとこですが、AdvancedGT架台では駆動軸に塗られているグリスも制御精度に大きな影響がありました。
最初に塗られていたものは鉱物油グリスでちょう度が高いものでしたが、気温による軸の摩擦が大きく変化が大きかったため、柔らかい化学合成グリスに変更した所、軸の回転も滑らかになり、オートガイドの精度が非常に高くなりました。(多分モーターが負けている状態だったと思います。皮肉なもので現在使用しているAdvancedVXよりかなりガイド精度が良いです。。。)
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